日本の袋市場（紙袋・ポリ袋・レジ袋＝いわゆるビニール袋）は、ここ数年で環境政策と消費意識の変化
により構造転換が進みました。転機は2020年7月のレジ袋有料化です。全国の小売店でプラスチック製買
物袋への料金徴収が義務化されました。一部の例外として生分解性プラスチック、または植物由来原料を
25%以上含むバイオマス由来の袋は対象外とされました。これにより、化石由来100%のレジ袋から、バイ
オマス配合袋や紙袋への置き換えニーズが顕在化しました。

制度実施の行動変容効果は明確で、複数の学術調査・統計でレジ袋の受け取り枚数は有料化後に約3割べで
減少し、廃棄枚数は約5割減という結果が報告されています。施策の目的であった「必要性の再考・ライフ
スタイルの見直し」を促す点でも一定の成果がかくにんされました。

一方、プラスチック資源循環の現状を見ると、日本は回収されたプラスチックの約8割超を“リサイクル”し
ていると喧伝される一方、その多くが熱回収（焼却発電）であり、マテリアルリサイクル比率の向上が課題
であるとの指摘も根強いのが実情です。

このような制度と社会的な要請を背景に、紙袋市場の拡大、環境配慮型ポリ袋（バイオマス・リサイクル）
の普及、パッケージ全体のグリーン化が同時並行で進み、袋市場は素材・用途・供給体制の三層で変化して
います。


1. 需要サイドの変化：消費者と小売りの新状態

・受け取り辞退の常態化
有料化以降、レジ袋の受け取りは施策前の約3分の1まで低下しています。結果として、店舗での袋在庫・発
注書の最適化や、マイバック携行の一般化が進みました。小売規模では「標準は辞退・必要時のみ購入」と
いうレジ運用が定着し、袋配布は“デフォルトからオプトイン”へとパラダイムが変わりました。

・例外規定が生んだ素材シフト
有料化の対象とされた生物解性や25%以上のバイオマス配合は袋は、コンビニ・スーパー・量販店を中心に
導入が広がり、同時に紙袋への移行や、デーパート・アパレル分野での紙袋価値向上を加速させました。

・エコ・透明性への期待
「環境負荷を数値で示す」ことが重要になり、FSC認証紙の採用、CO₂排出量貸可視化、バイオマス度の明記
など、コミュニケーションとしての袋の役割がましました。企業のサステナビリティ報告でも使い捨てプラ削
減KPIや再生材比率が示される事例が増えています。グリーンパッケージ全体の市場も2024年に149億ドル（約
2兆1600円）規模と推定され、2033年に向け年率5.5%で拡大が見込まれています。


2. 紙袋市場：価格より”価値”を売るステージへ

・市場規模と成長性
日本の紙袋市場は2024年に約2.71億ドル規模で、2023年に約4.26億ドルへと拡大、CAGP約4.75%が見込まれ
ています。紙パッケージ全体でも2024年に約162億ドル規模、2030年に約213億ドルと成長予測が示され、リ
サイクル紙の伸長が際立ちます。

・消費減デモ単価・付加価値は上昇傾向
2022～2024年に紙製品の数量は減っても、素材価値（単価）は上昇という報告があり、プレミアム紙袋や小ロ
ット高付加価値印刷の比重が増しています。ブランディングやギフト需要、越境ECの「開封体験」重視が単価
を押し上げています。

・運用の実務トレンド
肉薄化と強度設計の両立、水性インキ・無溶剤ラミ、FSC・PEF調達、紙・綿・紙ひもなど環境配慮ハンドル、
印刷面への過剰PP貼り回避といった“設計の細部”が、コストと環境の最適点を探ることです。紙価格の変動に
耐えるため、在庫回転数の短サイクル化やセミオーダーの型統一も広がっています。


3. ポリ袋・レジ袋：素材イノベーションと資源循環

・バイオマス配合・生分解性の広がり
政策の例外規定がバイオマス配合袋の採用を後押しています。大手小売の容器包装改革（セブン＆アイのバイオ
マス含有カトラリー導入など）と併走し、レジ袋・ポリ袋の植物由来比率の明記が"新しい当たり前”になりつつ
あります。

・リサイクルと“日本型リサイクル”の課題
日本はプラ“リサイクル率”が約85%とされていますが、そのうち熱回収の寄与が大きく、マテリアル循環（再生
樹脂の高品質化・再生比率の実装）がボトルネックになっています。パッケージ用途でのPCR（再生材）ポリエ
チレンの利用拡大や店舗回収スキームの高度化が業界課題です。

・国内樹脂・包装フィルムの地合い
2024年以降、国内の樹脂市場は自動車・電機・包装が牽引しています。中国の廃プラ輸入規制以降は国内循環へ
と軸足が移り、再資源化インフラの内製化や回収原料の高度選別が進展しています。包装ではPE・PPモノマテリ
アル化、ヒンジレス・薄肉化、無溶剤接着が主潮流です。


4.供給サイド：価格・供給安定・認証の三重管理

・価格ボラティリティと調達
原燃料高・為替の揺れが紙・樹脂ともにコスト環境を不安定にさせています。サプライヤ側はLCAデータに基づく
値決めや指数連動（インデクシング）、再生材、バイオマス材の安定供給契約でリスクを分散します。ユーザー側
も複数素材の冗長化設計（紙袋・ポリ袋の用途分担）を取るケースが増えています。

・規格・適合と表示
バイオマス度の基準適合表示、食品接触適合、ホットメルト・インキの化審法・PRTR対応など、豊齢・規格の厳
守と表示の適正はブランドリスク管理の核心です。輸出を見据えたEU規制（SUP・PPWR改正）への視線も強まっ
ています。


5.今後の見通し（～2030年代前半）

・紙袋は“少量多品種・高付加価値”で堅調
量は緩やかでも、単価と付加価値で伸びる構図になります。D2C・越境ECの開封体験需要、観光復活に伴うギフト
袋の回復が下支えします。市場予想も年率4～5%台の伸長を示唆しています。

・ポリ袋は“環境配合 ＋ 設計最適化”で再定義
25%以上のバイオマス、PCR樹脂（消費者廃棄物からリサイクルされたプラスチック）の品質向上、薄肉化と強度
シュミレーション、モノマテリアル化が"新しい標準”になります。レジ袋は枚数ベースで減少しつつも、高機能・
環境配慮型へのアップグレードで付加価値を図ります。

・グリーンパッケージ全体での最適化競争
LCAでの実証、回収・再資源化までを含む“スコープ外連携”、デジタルプロダクトパスポート（DPP）的な素材トレ
ーサビリティが、調達競争力に直結します。市場規模の画でもグリーン包装は今後も拡大が見込まれ、袋はそのフロ
ントランナーの一つとなります。






6. 結論

1. 政策ドリブンの"需要リセット”は定義
2020年の有料化により、レジ袋の利用・廃棄は大きく削減され、受け取りは約3割に縮小しました。廃棄は約5割
削減という行動変容が確認されています。袋は「デフォルト配布｝から「必要時購入」へとなり、これが紙袋・
環境配慮型ポリ袋の採用を押し上げました。

2. 紙袋は“価値”で伸びる：ブランディング X 環境で選ばれる
紙袋はブランド体験の器としての地位を確立そました。市場規模は中長期的に年率45%で成長が予測され、リサイ
クル紙やFSCなど環境価値を持った高付加価値モデルが主役になります。数量は抑制的でも、単価・設計品質・体
験価値での収益性を確保する流れが強まります。

3. ポリ袋は“環境配合 + 環境設計”で存在意義を再定義
25%バイオマス等の例外規定が普及を後押ししています。PCR樹脂の活用・薄肉化・モノマテリアル化が併走し、
実効的なマテリアル樹脂の構造が次の勝負所になります。熱回収偏重から脱し、高品質リサイクル材の供給拡大と
トレーサビリティが競争力の鍵になります。

4. 示唆：発注者サイドの実務アクション
・LCA・CO₂可視化を前提に、紙・ポリを用途別に最終配分
・認証・表示（FSC、バイオマスマーク、食品接触適合）を統一ルールで運用
・素材代替案の二重化、（紙袋 + バイオマス配合ポリ袋）で供給・価格リスクをヘッジ
・回収スキーム連携（店頭回収・再資源化）をPRと一体で設計
・小ロット高速印刷・在庫最適化で需給変動に機敏対応


結局のとこと、日本の袋市場は「削減」「代替」「循環」という三位一体の改革を続けています。紙袋は体験価値
で伸び、ポリ袋は環境配合と循環設計で再評価される。ガイドラインに沿った表示と、サプライチェーンを巻き
込んだ循環実装が、これからの勝ち筋です。環境と体験を両立させる“賢い袋設計”こそが、次の競争優位を生み
出します。

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